ECをメインの販売チャネルとするD2Cにとって、顧客ニーズにマッチした決済手段を選べるかどうかが 成長速度に大きく影響する。Amazon が提供する決済サービスであるAmazon Pay は、一般的にはそ の決済機能に焦点が置かれがちだが、その役割は単なる決済機能にとどまらない。スムーズな購買体験の提供や多様な決済手段に加えて、利便性の向上、購入率の改善、そしてブランドのマーケティング 戦略の支援など、さまざまな側面でブランドの成長を支援する可能性を秘めている。
「自社webサイトで商品を売る会社であれば、Amazon Payを使わない理由はない」と語るのは、スープやスムージーのサブスクリプションサービス「GREEN SPOON」を提供する株式会社 Greenspoon 取締 役COOの黒崎廉氏だ。Greenspoonは2019年5月に会社を設立してから、わずか4年でサブスクリプショ ン会員数 11 万人にまで成長した。その成長の一端を担ったのがAmazon Pay の「スムーズな購買体験」 と「信頼感」だという。Amazon Pay の導入を決めた理由や、その導入によって得られた具体的なメリット などについて、黒崎氏に聞いた。
ブランドのビジョンを叶えるための商品・成長戦略
―現在の会員数は11 万人。2019年5月に会社を設立し、2020年3月に最初の商品であるパーソナルスムージーをリリースして以降、順調に成長していますが、その要因をどう捉えていますか?
黒崎氏(以下、敬称略):時代のニーズに合ったということが、大きな要因としてあると思います。GREEN SPOONをリリースした直後に緊急事態宣言が発出され、在宅で過ごす時間が増えたことで、家での食事にまつわるさまざまな課題が一気に表面化しました。その課題解決のひとつとして注目された、選んでいただいたということは大きかったと思います。もうひとつは、この4年で提供する料理カテゴリーを広げ続けてきたことです。最初はパーソナルスムージーのD2Cとして、25種類のスムージーを提供するところから始めましたが、2020年11月にはスープのシリーズを、2021年8月にはサラダのシリーズを出し、2023年6月にはメインディッシュという主菜(おかず)のシリーズを出しました。いずれもスムージーを提供していたときから一貫して、野菜をたっぷり食べられるという訴求軸で展開しています。やはりスムージーよりスープやサラダの方が市場は大きいですし、おかずはさらに大きい市場となります。そうしたなかで、選んでいただくお客様が増えてきたと考えています。
―GREEN SPOON というブランド体験を設計する上で、大切にされていることを教えてください。
黒崎:GREEN SPOONでは「自分を好きでいつづけられる人生を。」というビジョンを掲げており、我々の活動はすべて、このビジョンに基づいて意思決定をしてきました。多忙な日々の生活の中で、野菜たっぷりのヘルシーな食事を摂り続けることは大変です。しかし、そこをなおざりにして「それでいいのかな」と思いながら過ごしたり、無理をして機能性だけを考えた食事を続けることでメンタルに不調を与えては本末転倒です。そうした方たちにGREEN SPOONを食べていただくことで、自身の身体や心を気遣うという経験をしてほしい。自分をいたわることを通じて、自分自身を好きになってほしい。GREENSPOONは、お客様が健やかな人生を送るための土台となりたいと思っています。こうした我々の提供する価値をきちんと伝えられているかどうか意識しながら、Webサイト設計や商品設計、ブランド体験設計を行っています。
―GREEN SPOON はサブスクリプションサービスです。新規顧客獲得と継続について、それぞれどういった点を意識して設計されていますか?
黒崎:新規顧客獲得に関しては、基本的にはダイレクト広告から購入していただくケースが多く、味に対する不安が購入時の不安要素として大きいと考えています。ですので、とにかく「おいしそう」と思ってもらえることを意識して商品選択ページをつくりました。商品写真はかわいい器やカトラリーを添えたスタイリングでカラフルにし、動画を作ったりして、味のイメージがしやすく、楽しい雰囲気になるように心がけています。
継続に関しては、お客様が商品に飽きないように、毎月2 つほど、新商品を出すようにしています。またその際に、「レトロな喫茶店の懐かしい味わいを楽しめる」「春野菜がおいしいお料理」など、食べたいと思っていただけるようなテーマを打ち出して、お客様が新商品を検討すること自体が楽しいイベントになるようにしています。
また、パッケージデザインはイラスト主体で、商品名もありきたりな料理っぽくない名前にしています。健康的な食生活が楽しくなったら良いと思っているので、冷凍庫にたくさん並んでいても圧迫感や義務感を感じない、むしろ気分が上がるようなものにしようという意図があります。たとえば、スープのメニューの中に「Tadaima」という商品がありますが、これは西京味噌ベースの豚汁なんです。豚汁には実家で食べるイメージがあり、実家にいるような温かい気持ちを商品名とイラストで表現しました。そして、「Minesu&Rone」は濃厚トマトと野菜が美味しいミネストローネですが、本格的な味を提供してくれるお店を想起させる商品名をつけました。こんな風に食べるシーンや料理そのものをイメージ化した商品名を付けることで、楽しい気分になってほしい。商品を通じて、我々とお客様がコミュニケーションする形になればいいなと思いながら取り組んでいます。
Amazon Pay を選んだ理由とは?顧客体験を重視した決断
―EC ではどの決済手段を導入するかは、顧客体験の設計的においても、事業においても非常に大事なポイントのひとつです。GREEN SPOON では、サービス開始時点からAmazon Pay を導入していたとのことですが、その理由を教えてください
黒崎:当初からAmazon Payは導入しようと考えていました。忙しい方がターゲットだったので、Amazon ユーザーとGREEN SPOON のターゲットユーザーは重なる部分が多いという予想があったからです。創業メンバーは全員IT 業界の出身で、日常的にAmazonを使っているヘビーユーザーでもあるのですが、だからこその予想だったともいえます。
Webで冷凍食品をサブスクリプションで購入する人とはどういう人か? 答えの1つは「非常に多忙だが、食や健康への関心も高い人」です。こういう人は普段からECも積極的に利用しているはずで、当然日常的にAmazon.co.jpを使用している方が多いだろう。それならば、使い慣れたAmazonと同じ感覚で決済できるAmazonPayを導入しない理由はありません。
また、Amazon Pay の導入は、お客様の購買体験を高めてくれるのではないかという期待もありました。ECでは、特に新規購入の場合、住所など入力情報が多いことが大きなハードルです。その点、Amazon Pay なら、Amazonアカウントに登録している情報を使うため基本的にテキスト情報の入力が必要なく、数クリックするだけで購入できます。このスムーズさはお客様にとって非常に大きなメリットだと考えました。
Amazon Pay の圧倒的な信頼感と利便性
―実際に、ユーザーのAmazon Pay の利用状況はいかがですか?
黒崎:想像していたよりもはるかに多くのお客様にご利用いただいていて、驚きました。現在導入している決済手段は、Amazon Payのほか、クレジットカードや後払いなどですが、約半数がAmazon Payからの購買です。また、スタートアップを立ち上げたばかりの時期だと、よく知らない会社にクレジットカード番号や個人情報を預けるのは何となく気が引けると感じるお客様もいると思います。そういった方に対して、Amazonというブランドが持つ高い信頼感にバックアップしてもらっていたという側面もあったと思います。
また、サブスクリプションサービスなので、カードの期限切れが理由で決済不備が起こることがあります。事業者として関わってみて実感したのですが、思っていた以上に多い上に、再登録していただくハードルがとても高いんです。その代わりに決済未完了の通知メールを送信する際に、Amazon Payの利用を提案させていただいてサブスクリプション継続につなげられたということもありました。決済というのはスムーズに通って当たり前という面があります。その点、Amazon Payは、決済に関するネガティブな体験を圧倒的な利便性で減らしてくれているという感覚があります。
―お客様の体験以外の部分で、事業者として感じたメリットは何かありますか?
黒崎:Amazon Pay 導入に際して、手間がかかったとか、何かトラブルがあったという記憶はなく、とにかくスムーズに導入できました。それによって捻出できた時間を使って、たとえば商品開発やクリエイティブ制作、顧客体験を高める本来の業務や作業に注力できたことは、大変ありがたかったと感じています。
あとは、入金サイクルが早いことですね。Amazon Payの入金頻度は、初回は16日後、その後は14日周期で入金処理が行われ(サイクル周期は事業者ごとに任意で変更できる)、その後2 ~ 5 営業日には着金するのですが、この早さには特に立ち上げ時期には本当に助けられました。スタートアップの成長速度を速めるには、キャッシュコンバージョンサイクルを小さくすることが大きな財務課題ですが、その点でも大きな支えになっていただきました。
さまざまなキャンペーンを展開してくれていることも助かっています。「Amazon PayでGREEN SPOONを買ったら、購入金額の一部をAmazonギフトカードで還元された*」というのは、お客様からすれば嬉しい体験だと思いますし、それは我々にとってもお客様の顧客体験の向上という形で享受させていただいている形になります。こうしたメリットをできる限りお客様に還元できるように、我々も色々な施策を実施しています。正直なところ、Amazon の利用者も増えているいまAmazon Payを使わない理由はないかなと思っています。
Amazonという圧倒的な信頼性の高さを背景に、お客様に対しては決済周りの利便性を高めてくれて、我々にとっては決済にまつわる手間を軽減してくれて、ほかの業務にリソースを振り分けられる。その上、集客やコンバージョン率の向上にも大きく寄与してくれている。これからもずっと、頼れるインフラのような存在としてあり続けてくれることを期待しています。
―Amazon Pay を活用して、挑戦したいこと、あるいは今後Amazon Pay を使い続けることで達成したい目標があれば教えてください。
黒崎:もっとシームレスな購入体験を Amazon Payと一緒に作れるのではないかと思っています。購入体験のアップデート、新しい購入体験の創造に、Amazon Payと一緒に挑戦してみたいですね。
※ 株式会社 メディアジーン「 DIGIDAY」掲載記事(2024年6月26日配信)を再編
※ データはすべて株式会社Greenspoon自社調査による(2024 年6月時点)
Photo by 渡部幸和